難解度 リンク
2. 科学であそぼう 「なし」はパスワード
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2a. 不思議な色の世界 易 あり
2a−1 色の見える仕組み 易 あり
2a−2 色とは 易 あり
2a−3 色と電子の不思議な関わり やや難 あり
2a−4 コーヒーブレーク 1 笑/易 あり
鏡の左右は逆、でも上下はなぜ...
2a−5 反射、透過/屈折、吸光 やや難〜難 なし
2a−6 コーヒーブレーク 2 やや難 あり
現実に見える量子の不思議な世界
2a−7 色の変わるわけ(1) 易 なし
補助解説: 大きな数 易 なし
2a−8 コーヒーブレーク 3 易 なし
花の色
2a−9 色の変わるわけ(2) 易〜やや難 なし
2a−10 コーヒーブレーク 4 やや難 なし
拡散
2a−11 まとめ 易 なし
2b. 高分子の科学 (’05.9.1 NEW) 易〜やや難 あり
2c. 科学ロケットであそぼう 易 あり
(炭酸ガスによる推進)
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色が見える現象、色が変化する現象は、たいへん奥が深いものです。
なぜなぜと突き詰めていくと、理工系大学の専門課程で、選択して学ぶような
高度な内容にまで行ってしまいます。
そこまで難しい内容の解説を、十分付けることはできませんが、そのあたりの
扉を開くまでの道案内を、この手品の解説でいたします。
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−−− 要点(かんたんにいうと) −−−
・色(いろ)をの見える仕組み(しくみ)は、次のようなことを順に(じゅんに)たどる
と理解(りかい)できるようになります。
・目の仕組み(しくみ)
・光と色(いろ)の関係(かんけい)
・色の3原色(げんしょく)
・物(もの)に色(いろ)が付くしくみ
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私たちは、この世界のさまざまな色を認識し、いくつかの色調には独特の名前を付けて親しんでいます。例えば赤や赤系の色でも朱色、茜、くれない、金赤、緋赤、鴇色(ときいろ)、桜色、えんじ、真紅、ワインレッド、などニュアンスによっていろいろ名前を変えていますが、そもそもこのように目が色を感じる仕組みはどのようになっているのでしょう。 そして、色とは何なのでしょう。
私たちは何気なく、この世界のいろいろな色を感じ、これを当たり前のように見ていますが、この色を感じるという現象は、非常に巧妙な目の仕組みと、自然の不思議な仕組みが働きあってできているものです。
この目の働きを理解するには、次のようなことがらを順次ひもといていく必要があります。
・目の構造
・目が光から色を認識する仕組み
・暗視覚(明るさだけを感じる視覚)と明視覚(色を感じる視覚)
・光と色の関係
・光に含まれる色の成分(スペクトル)
・色の3原色
・物の着色するしくみのいろいろ
・光の屈折、回折と分光
・光の吸収と色の発色
・光と電子の不思議な関係
そして、このホームページで扱っている手品の仕掛けは、これらのことがらにちょっとした細工を施したものなのです。
解説は、多少お子様の理解には難しい部分もありますが、これは「そんなもの」と妥協させて頭に入れてあげれば、後日のある時点で、全てがつながりを持って理解できるようになります。(注:)
それでは、以下に順次解説をしていきます。
※注:−−−−−−−−−−−−−−−
理解するということは、過去の経験や知識から、それを説明できるようになるということです。 ここで重要なのは、理解できる年齢であるかどうかではなく、その物事に興味を持てるかどうかだけです。 興味を持てるかどうかは大きな違いで、興味があれば自分から調べようとするし、教えたことは自分なりにしまっておいて、関連することがらを取り入れていく行動を引き出します。 そして後日、取り入れたことの全てが、つながりを持って理解できる日を待っているでしょう。 このようにして後に理解した内容は、大きな広がりを持ち、単に教育するのとは全く違う意味を持ってきます。
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2a−1−1 目の構造(目のしくみ)
−−− 要点(かんたんにいうと) −−−
・目には光を集める(あつめる)レンズと、
・光の量(りょう)を調節(ちょうせつ)する部分(ぶぶん)と、
・光を感じる(かんじる)細胞(さいぼう)があります。
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私たちの目は、外界の光を取り入れ、通過する光量を調節し、レンズを通して焦点を調節し、光を網膜上に像として投影し、視覚神経により神経の信号に変換し、脳に送って情報を処理し、物の形や色などを認識しています。
目の構造を絵にすると、右のようなものになります。
目に入った光は、その光量が多すぎると像が読み取れなくなるだけでなく、目にダメージを与えるため、虹彩と呼ばれる絞りで光量が最適になるように調整されます。 次に水晶体と呼ばれるレンズで、見たい物に焦点を合わせて、網膜と呼ばれる目の神経が集まっている場所に対象の像を結びます。
水晶体を通った光は、その奥にあるガラス体という組織を通って網膜に届きます。この水晶体とガラス体は、ヒトの組織の中で唯一の透明な組織で、中には血管も通っておらず、透明なタンパク質のかたまり(タンパク質コロイド)です。
2a−1−2 目が光と色を感じる仕組み
−−− 要点(かんたんにいうと) −−−
・目には光の強さ(つよさ)だけを感じる(かんじる)細胞(さいぼう)と、
・色を感じる(かんじる)ことのできる細胞(さいぼう)があり、
・色を感じる(かんじる)細胞(さいぼう)には、色素(しきそ=色のもと)がふくまれています。
・その色素(しきそ)は、赤(あか)をとらえるもの、緑(みどり)をとらえるもの、青(あお)をとら
えるものの3種類(しゅるい)があります。
・光が当たると、これらの色のもとが3つの色をとらえ、色を感じる(かんじる)細胞(さいぼう)
にはたらいて、色が見えるのです。
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目の網膜の中には、たくさんの光を感じる視覚神経が入っています。視覚神経は網膜全体に分布していますが、特に中心窩という部分に集まっています。私たちが何か物を注視しているときは、ここを使って見ています。注視して見ている部分は鮮明に写っていますが、その周囲はぼやけて見えていることを感じることと思います。
集められた光の信号は、一本一本の神経から脳に伝えられます。この神経は目の一点に集められ、そこから神経繊維の束になって出て行っています。この神経が束になって集まっているところは、物を見るための視覚神経細胞が少なく、この部分だけは周囲に比べて物を見る力が弱く、この点は盲点と呼ばれています。
光を感じる視覚神経細胞は、大きく2種類に分かれます。一つは暗いところで活躍し、主に物の形など物の存在、光の存在(明るさ)を感知するために使われます。これは暗所視といい、色を感じる機能はありません。私たちは、ほとんど物があるかないか見分けられる程度の暗がりでは、物の色を感じませんが、これはこの色を感じる機能のない暗所視で見ているからです。なお、後で触れますが、この暗所視は、ビタミンAが密接な関係を持って作用しています。ビタミンAが不足すると、暗がりで物が見えにくくなると言われていますが、ビタミンAがこのような視覚に働く作用をする物質だからなのです。(なお、ビタミンというのは、ヒトの体にとって必要ですが、自分では合成できない物質のことを言います。)
もう一つは、明所視と呼ばれ、こちらは色を感じる視覚神経です。この視覚神経には、さらに3種類があり、それぞれ緑・赤・青の光を捉えて神経信号に変換しています。これらの視覚神経細胞には、色素が含まれていて、緑の光(光の波長540nm付近)に吸収極大を持つクロロラーベ、黄色から赤の光(580nm付近)に吸収極大を持つエリスロラーベ、青の光(440nm付近)に吸収極大を持つシアノラーベの3種類の色素を持つ細胞があります。
これらの色素を持った視覚細胞が、それぞれの色のときに強い反応を示して、当たっている光 に色が付いていることを脳に伝えているのです。後に説明するように、光の色の3原色は、赤(R)、緑(G)、青(B)であるといいますが、これは、目の中の視覚細胞がそれぞれ感じる色であり、3原色のもとはこの視覚細胞の持つ色素の光吸収特性によるものなのです。3色とも同じように光を反射する物があって、この光が視覚神経に届くと、私たちはこの物を「白い」と感じますが、これは、こうした光の状態を白いと感じるように脳が処理しているのです。
暗所視を担う細胞(明るさを感じる細胞)は、明所視(色を感じる細胞)よりも圧倒的に多く、暗所視細胞はそれぞれの目に1.2億、明所視細胞は700万ほどあると言われています。
この暗所視細胞ですが、先ほど少し触れたように、この働きにはビタミンAが重要な役割を演じています。暗所視を司る細胞(桿体という)には、ビタミンAの変化したビタミンAアルデヒド(cisレチネン)とオプシンというタンパク質が結びついた「ロドプシン」という物質が存在しています。ここに光が当たると、ロドプシンが分解し、transレチネンという物質と先ほどのオプシンになります。このとき分解によって、視神経に信号が発生し、これが脳に伝えられて、光が存在していることを伝えます。
transレチネンは血液中に入って、cisレチネンに変換され、再び暗所視を司る細胞(桿体)に入ってオプシンと結合し、光を感じる物質「ロドプシン」になります。
こうして光を感じる物質は桿体の中で生成・分解を繰り返し、そのときの分解の信号によって、光の存在を脳に伝えているのです。
明所視を担う細胞(色を感じる細胞)は、中心窩付近に多く集まっています。
ここには先ほど挙げた緑を感じるクロロラーベ、赤を感じるエリスロラーベ、青を感じるシアノラーベの3種の色素が、それぞれの色の認識に働いています。これらの色素も同様な仕組みで、タンパク質と結合し、それぞれの色の光によってこれが分解し、このときそれぞれの色が存在することを伝える信号を脳に送ります。信号を送ったあと、それぞれの物質は、再びタンパク質と結びついて、明所視細胞でそれぞれの色の光を待ち受けます。
こうして光と色を感じる物質は明所視細胞の中で生成・分解を繰り返し、そのときの分解の信号によって、光と色の存在を脳に伝えているのです。
さて、それでは次に「2a−2 色とは」と題して、上記から掘り下げる必要の出てきた
・色の3原色
・光のスペクトル(光の波長と色との関係)
について見ていくことにします。
そこへ行く前のイントロとして、色の不思議を一つ。
光の3原色は赤(R)、緑(G)、青(B)、
また絵の具の3原色はシアン(C=緑みの青)、マゼンタ(M=赤紫)、イエロー(Y=黄)です。
R、G、B、C、Yはそれぞれ光のスペクトル(単色)に対応しますが、マゼンタだけはありません。虹の色順を忘れた方はこちらを参照ください。確かにマゼンタはありませんね。
つまり、虹(単色スペクトル)の中に、原色の一つであるマゼンタの色が含まれませんが、これはどのように理解したらよいのでしょうか。
・・・・・虹にマゼンタが入っていれば、もっともっと派手できれいでしょうに。・・・・・
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2a−2−1 光の3原色、えのぐの3原色
−−− 要点(かんたんにいうと) −−−
・光の色の3つの要素(ようそ)は、赤(あか)、緑(みどり)、青(あお)
・えのぐの色の3つの要素(ようそ)は、紅(べに、あかむらさき)、黄色(きいろ)、
緑青(みどりあお)です。
・赤(あか)、緑(みどり)、青(あお)の光をまぜると、どんな色でも出せます。
・紅(べに)、黄色(きいろ)、緑青(みどりあお)のえのぐをまぜると、どんな色でも出せます。
・この3つの色の要素(ようそ)は、先ほどの、目の中の3種類(しゅるい)の色素(しきそ)と
関係(かんけい)があります。
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右の絵は、
・光の3原色(加法混色) と
・えのぐの3原色(減法混色)
を表したものです。
色を表す絵は、さらに明度と彩度を表す軸があって複雑なのですが、書ききれないので、説明はこの程度にしています。
さて、まず
(1)光の3原色(加法混色) ですが、
この絵は、
・ヒトの視覚色覚の3要素が赤(R)、緑(G)、
青(B)であること、(先ほどの説明も参照)
・赤と緑を混ぜると黄 (意外に感じますね。)、
・赤と青を混ぜると赤紫(紅、マゼンタ)
・緑と青を混ぜると緑みの青(シアン)
・赤、緑、青を混ぜると白
になることを意味しています。
光の場合には、混ぜるほど光が増えて明るい色に
なっていきます。
次に
(2)えのぐの3原色(減法混色) ですが、
えのぐは、白い光から色を吸収して残った色からそのえのぐの色を出しているので、この場合は、混ぜるほど光が減って、暗い色になっていきます。絵の具の3原色は、明るい3つの色でできています。
例えば
・黄(Y)は、白い光から青(B)を引いて、残りの赤と緑の光が混ざったもの、
・赤紫(紅、M)は、白い光から緑(G)を引いて、残りの赤と青の光が混ざったもの、
・シアン(C)は白い光から赤(R)を引いて、残りの青と緑の光が混ざったもの、
と考えると理解しやすいようです。
つまり、黄色のえのぐは、青の光を多く吸収し黄色く見えており、シアンのえのぐは、赤の光を多く吸収して緑みの青(シアン)に、マゼンタのえのぐは、緑を多く吸収して、赤や青を反射するために紅(マゼンタ)に見えているのです。
このえのぐの3原色の絵は、それぞれを混ぜると以下になることを表します。
・黄と赤紫(紅)を混ぜると赤、
・黄とシアンを混ぜると緑、
・赤紫(紅)とシアンを混ぜると青になり、
・黄、赤紫(紅)、シアンの3つを混ぜると、全ての色を吸収して黒になります。
さて、私たちがよく色を作る操作としては、えのぐの混合など、えのぐの3原色(減法混色)によっていますので、きれいな色を出そうとして、いろいろな色を混ぜれば混ぜるほど、逆に暗い濁った色になって行ってしまいます。これは絵を描くときによく経験することと思います。
光を混ぜていろいろな色を作っている例は、テレビやパソコンのディスプレイで、これはよくご存じのように、画面を拡大して見ると、R,G,Bの点が無数にあり、それぞれが明るくなったり、暗くなったりして、いろいろな色を作り出しています。 どの色を混ぜると何色になるかは、上の光の3原色の絵を見ればすぐにわかります。 黒はどの光も点灯させないことで出しています。
さて、この3原色ですが、なぜこの3つの色が基本要素なのかというと、これは先ほど触れた目の中の色素物質に関係しています。目の明所視細胞が、この赤、緑、青に反応し、その他の色は、これら基本3原色の混合比によって、脳で処理されて感じている色だからです。目に届くこの基本3種の光の量を調節することで、脳が分析してヒトが感じる色は全て作ることができるという訳です。
実際の自然界の色は原色に近いものは少なく、微妙で味のある色調を出していますが、これは3つの色の混合割合によって作り出されます。例えば、えのぐでワインレッドを作るには、まず紅と黄色で赤を作りますが、これだけでは単調な赤なので、これにほんの少々シアン(緑みの青)を加えてできます。(シアンが多すぎると黒っぽい色になって、失敗します。)
さて、ここで先ほどの不思議について見てみましょう。
(1)マゼンタとは? なぜ虹にはマゼンタが含まれていないのでしょうか。・・・
そしてもう一つ追加です。
(2)光の赤と緑を混ぜてできた黄色と、単色スペクトルの黄色との違いは何?
2a−2−2 光のスペクトル
−−− 要点(かんたんにいうと) −−−
・白い光の中には、虹(にじ)の7色がすべてふくまれています。
・プリズムや雨粒(虹のもと)は、この7色を分ける力を持っていて、
白い光から7色を作っています。
・先ほどの光の3原色(げんしょく)は、すべて虹(にじ)の7色の中に登場(とうじょう)します。
・えのぐの3原色(げんしょく)については、黄色(きいろ)と緑青(みどりあお)は登場(とうじょ
う)しますが、紅(べに)は出てきません。
・紅(べに)は原色(げんしょく)の一つですが、赤(あか)と青(あお)の2つの光をまぜて作ら
れ た色なのです。
・赤(あか)と青(あお)の光を、同時(どうじ)に同じ量(りょう)を感じる(かんじる)と、ヒトの脳
(のう)で紅(べに)と感じる(かんじる)ようにできているのです。
・黄色(きいろ)は虹(にじ)の7色に登場(とうじょう)しますが、赤(あか)と緑(みどり)の光を
まぜても出てきます。これは、純粋(じゅんすい)な黄色(きいろ)の光が目に入ると、赤(あ
か)を感じる(かんじる)細胞(さいぼう)と、緑(みどり)を感じる(かんじる)細胞(さいぼう)
の両方(りょうほう)で感じ(かんじ)とられるためです。
・つまり、赤(あか)と緑(みどり)の光を、同時(どうじ)に同じ量(りょう)を感じる(かんじる)と、
ヒトの脳(のう)で黄色(きいろ)と感じる(かんじる)ようにできているのです。
・赤(あか)と緑(みどり)の光をまぜて、その細胞(さいぼう)に感じ(かんじ)させても、黄色
(きいろ)だけを使って、赤(あか)と緑(みどり)を感じる(かんじる)細胞(さいぼう)にはたら
きかけても、結果(けっか)は同じ黄色(きいろ)となるのです。
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白色光をプリズムで分光すると、虹の7色に分けられることは良く知られています。
これは、いろいろな色が混ざってできている白色光を、ガラスの中に導いて、光の波長によって異なる屈折率を利用して色を分けているものです。
さて、私たちが感じる色を光の波長と対比させてみると、下の図のようになります。
ヒトの目は、おおよそ400nmから700nmの範囲の光に感度を持っており、下図のように、波長の長い700nm付近を赤と感じ、順次橙、黄、緑、青、藍、そして波長400nm付近を紫として感じます。
良くご存じの虹の7色が示されていますが、えのぐの3原色であった紅(マゼンタ=赤紫)だけは虹の色には含まれません。紅の単色スペクトルは存在しないのです。
では、紅はどういう色かと言いますと、赤と青の光を混ぜたものです。もう少し踏み込んで言うと、目の中の明所視細胞(色覚細胞)のうち、赤と青を感じる細胞がおよそ同量の光を感じ取った時に、これを脳が処理して紅であると認識するように出来ているのです。
これは、白色光から緑を中心とするスペクトル成分を吸収したときにも起こり、両側の赤と青の成分が残り、赤と青を感じる細胞が反応して紅と感じられます。紅のえのぐは、緑の光を吸収する成分が含まれた色素なのです。
同様に、黄色のえのぐは、白い光から青を吸収し、赤から緑にかけての色を反射する成分として残す成分が含まれた色素です。同様に、ヒトの目の中の明所視細胞(色覚細胞)のうち、赤と緑を感じる細胞がおよそ同量の光を感じ取った時に、これを脳が処理して、黄色であると認識するように出来ています。
では、単色スペクトルである黄色の光は、どうやって黄色と感じ取られているのでしょうか。
赤や緑を感じる色覚細胞は、それぞれ赤や緑に吸収極大を持っていますが、黄色のスペクトルにも吸収の裾野は広がっています。黄色の単色スペクトルが目に入ると、赤と緑の色覚細胞がおよそ同量の反応を示し、これが脳で処理されて黄色と感じているのです。ヒトの目や脳にとって、黄色の本質は赤と緑の混合であって、逆に単色の黄色は、赤と緑の色覚細胞の両方に、等量作用するあたりの波長域として黄色と感じられているのです。
黄色のえのぐと青のえのぐを混ぜると、黒になりますが、これは次のように説明されます。
黄色のえのぐは、青を吸収して赤と緑の光を反射しています。一方、青のえのぐは赤と緑の光を吸収して、青の光を反射しています。この2つを混ぜてしまうと、赤と緑と青の光を吸収するようになり、結果は光の3原色のどれもが吸収されて帰ってこない状態、すなわち黒になります。
同様に、赤と緑青(シアン)を混ぜても、緑と紅(マゼンタ)を混ぜても、同じ結果になります。これらは補色の関係であると言い、補色同士を混ぜると3つの原色を吸収して黒になります。
右の図の「グリフィスのカラーサークル」は、こうした関係を表したもので、色を10色定義し、スペクトル順に並べ(紅除く)、対角に補色の関係になる色が配置されています。
以下は対角にあるので、補色の関係です。
(1)赤−青みの緑、 (2)橙−緑みの青、
(3)黄−青、 (4)黄緑−紫、
(5)緑−紅
また、光の混合の関係(加法混色)では、対角を混ぜ合わせると白になり、対角でない色を混ぜ合わせると、その間に挟まっている色になり、混合する色の距離が遠いと、その挟まった色に白を加えた明るい色になります。
例えば、(1)黄色と緑で黄緑、 (2)赤と黄で橙、 (3)紅と青で紫 は容易に想像できますが、(4)橙と黄緑で黄色、 (5)赤と緑で黄色、は少し想像が難しいかと思います。光の混合は普段あまりやっていないので、判りにくく、えのぐの混合などでは赤と緑を混ぜると黒に近い色になってしまいますから、想像がしにくいのでしょう。
ちなみに、えのぐの赤と緑は、それぞれ緑と青、赤と青を吸収する色素ですから、混ぜると、緑、青、赤、青を吸収して、特に青を多く吸収する黄味を帯びた黒になるのではと想像されます。
それでは、先ほどでてきた、赤、緑、青を吸収する色素を持った神経細胞は、それぞれどんな色をしているでしょうか? 前1−1項で、赤を感じる神経細胞が赤いと想像していた方は、この項で勘違いに気づいたことと思います。 写真だけで、実物をしげしげと見たことはないので、明言を避けますが、それぞれ、白から赤・緑・青を引き去ったような色をしています。
白から赤を引くと緑+青でシアン、緑を引くと赤+青でマゼンタ、青を引くと赤+緑でイエロー(黄色)ですね。
・・・だんだんややこしくなって、返って訳がわからなくなってしまいました・・・ので、この辺で次の電子と色の関係の話に行きたいと思います。
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次に移る前にイントロです。
ヒトの目は、赤から紫のスペクトル域までしか感度がありません。
この外の赤外域や紫外域は色として感じられないのです。これではカラーサークルにはならないので、ヒトの脳はうまく処理しているものですね、これをつなぐ色としてマゼンタを用意しています。このマゼンタがなければ、加法/減法混色もうまくいきませんし、自然界の色としても少し物足りない感じになってしまいますね。 実際自然界には、マゼンタ他、さまざまな色を持った花々が存在し、赤、橙、黄、青、紫など無数の微妙な色合いと共に、私たちの目を楽しませてくれます。
ヒトがどうして赤と青の混色であるマゼンタを、あの赤紫〜紅の色として感じるのか、その理由は判りません。このように感じるようにプログラムされているのか、進化の過程でこうなったのか。
いずれにしても、γ 線と言われる10-3nmから、電波と呼ばれる1メートルから百キロメートルにも及ぶ広い電磁波の波長域の中で、可視光と呼ばれる400〜700nmという極めて狭い範囲の波長域で、あれだけ豊富な色を感じ、花に溢れた春には、その美しさを満喫することができるのです。私たちの目の仕組み、色を感じる仕組みがうまくできていている有り難さを感じますが、それと同時に、いろいろな色を作り出している花の方も、複雑な化学反応を用いて色素を作り、これを混ぜ合わせて、巧みに微妙に異なるたくさんの色調を作り出す努力をしているのです。
さて、この後、光のスペクトルと色の対応のところで出てきた、色と波長の関係について、これと切っても切れない関係にある電子の話と関連させて、次の2−3a項で見ていくことにしましょう。
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2a−3−1 光とは
−−− 要点(かんたんにいうと) −−−
・光は電磁波(でんじは)というものの一部(いちぶ)で、X線(エックスせん)や、電子レンジ
(でんしレンジ)で使うマイクロ波(は)、テレビの電波(でんぱ)もその仲間(なかま)です。
・光は電子(でんし)を振動(しんどう)させて、分子(ぶんし)を回転(かいてん)させたり、振動
(しんどう)させたり、分子(ぶんし)を分解(ぶんかい)したり、いろいろな作用(さよう)をしま
す。
・電子(でんし)がエネルギーを外に出す(だす)とき、光のエネルギーとして放出(ほうしゅつ)
します。
・光の波長(はちょう)と光のエネルギーには関係(かんけい)があります。 つまり、色と電子
(でんし)のエネルギーには、密接な(みっせつな)関係(かんけい)があります。
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先ほど、2a−2−2で「光のスペクトル」と題して、色と光の波長の関係を見ましたが、そもそも光とは何なのでしょう。そして光はどういう時に、どこから出てくるのでしょう。
光のスペクトルでは、400nmから700nmの可視光の部分について触れましたが、もう少し広い 意味で光という場合、この可視光の両外側にも光の領域があります。紫の外側には紫外線という光が、赤の外側には赤外線(近赤外と遠赤外があります)の領域があります。
紫外線と呼ばれる領域は、200nmから400nmにかけての領域、赤外線と呼ばれる領域は、およそ700nmから1mm(1000μm)で、特に700nm〜2500nmは近赤外、
2500nm〜50μmは中赤外 50μm〜1000μmは遠赤外と呼ばれています。(いろいろな定義があります。)
紫外線は、人工的には殺菌ランプやブラックライトなどで作っていますし、太陽の光にも紫外線は含まれています。空気やオゾン層のない宇宙空間では、太陽光に含まれる紫外線は非常に強く、 夏場の地上の500倍もの紫外線にさらされています。これは強い化学作用を起こさせる光で、紫外線に長くさらされた物は色あせしたり、分解したりします。ヒトの肌は、紫外線に当たると、その化学作用を受けた結果と、肌の防護策として「日に焼けた」状態になります。
それでは、なぜ紫外線に当たると色があせたり、物質が分解したりするのでしょう。
同じように、先ほど2a−1−2 「目が光と色を感じる仕組み」でも見たように、可視光によって目の中の「ロドプシン」という物質が変化して、目の神経に刺激を伝え、これが色として認識されるということを見ました。 なぜこのように光が当たると物質が変化するのでしょう。
一方、赤外線は温度の高いものからたくさん放出されています。温度が高いということは、物質の中の分子や原子がより激しく振動したり回転したりして動いているということです。赤外線ランプによるストーブや、赤外線のこたつなどがありますが、このように赤外線は物を暖める性質があります。
では、なぜ赤外線が当たると物が暖まるのでしょう。
紫外線や赤外線の外側には、もう光はないのでしょうか。
これらの外側はもはや光とは呼びませんが、さらに一般的に電磁波と呼ぶ領域があります。
紫外線より波長の短い領域にはX線やγ 線と呼ばれる電磁波があり、これらも光の仲間です。
X線とγ 線の波長での明確な区別はありませんが、X線は人工的に作られたもので、1nm付近を中心にした領域、γ 線は核崩壊などの核現象で自然界から放出されるものを指しており、10-3nmを中心にした領域に分布しています。
また、赤外線の外側には、マイクロ波や電波と呼ばれる電磁波があり、これらも光の仲間です。
マイクロ波は1mmから1m、電波は1m以上の波長を持った電磁波を指しています。
X線はレントゲン写真などに使われることでよくご存じのもの、マイクロ波は電子レンジなどで使われています。電子レンジでは12.2cm(2450MHz)の波長のものが使われ、これは水の分子を強く回転させて加熱する作用を持った電磁波です。
このように、光とは、10-3nmより短い波長を持ったγ 線と呼ばれる電磁波から、波長が100km(周波数3kHz)にも及ぶ超長波(VLF)と呼ばれる電磁波までの領域のうち、ごく一部分を指して呼んでいるもので、この波長の違いから電磁波としての性質に違いがあるため、このように呼び名を変えているのです。
電磁波とは正確に言おうとすると難しいのですが(コーヒーブレーク 2を参照ください)、ここでは
(クリックするとコーヒーブレーク 2の行に進みます。↑)
電磁波のうち、限られた領域を指す光の「電界と磁界の波動」としての特性に注目して、この電子との関係、そして色との関係を見てみることにします。
先ほど光のスペクトルのところで、光の波長と色との関係を見ました。400nm付近が紫、700nm付近が赤でした。この400nm,700nmという数値は、光(電磁波)の波としての波長を表しており、光がそれぞれ400nm,700nm進む間に、電界と磁界の波が1波交番するということです。
右の図で1周期がそれぞれ400nmの光を紫、700nmのものを赤と感じます。
ここで、光の速度cは真空中で30万km/s(3億m/s)なので、1秒間に進む間に何回振動する かは計算で求めることができます。
つまり、振動数ν(s-1)と波長λ(m)の間には
ν・λ(m/s)=c(m/s)
の関係があり、振動数νはc/λと等しくなります。
例えば400nmの紫の光はν=3×108/(400×10-9)=7.5×1014(s-1)
700nmの赤の光は4.3×1014(s-1) となります。
光はこうした振動数で振動する電界・磁界の波の性質を持っており、物質中の電子(マイナスの電荷を持っている)を振動(励起)させたり、電子雲に包まれた分子を振動させたり回転させたりします。
2a−3−2 光と電子と色の関係
−−− 要点(かんたんにいうと) −−−
・光は電子(でんし)に働き(はたらき)かけて、分子(ぶんし)を回転(かいてん)させたり、
振動(しんどう)させたり、電子(でんし)を激しく(はげしく)動かしたりします。
・その結果(けっか)、当てた光のうち、分子(ぶんし)や電子(でんし)に働き(はたらき)
かけた光は吸収(きゅしゅう)されます。
・分子(ぶんし)や電子(でんし)には、それぞれこの働き(はたらき)かける作用(さよう)の
強い(つよい)波長(はちょう)の光があり、これによって吸収(きゅうしゅう)されやすい光
が決まっています。
・吸収(きゅうしゅう)されやすい光が吸収(きゅうしゅう)されて、残った(のこった)光によっ
て色が見えてくるのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
マイクロ波は、電子レンジで使われているように強力に物を加熱する作用を示します。これは水分子の回転に強く作用して、物を加熱しています。また、赤外線も物を暖める作用を持っています。一方可視光や紫外線は物は暖まらないように感じますが、物質の分解や変質に作用するようです。
どちらが高いエネルギーを持っているでしょうか。
一見矛盾するように感じますが、この紫外線や可視光の方が、マイクロ波や赤外線よりも、はるかに高いエネルギーを持っています。
物を壊すとき、それが小さいほど壊すのには大きなエネルギーを必要とします。大きなコップは手を滑らすと簡単に割れますが、小さいガラスのおはじきは意外と丈夫。もっと小さいビーズ玉は、無理やり壊そうとしなければ壊れません。どんどん小さくなって物質が分子レベルまでいくと、金槌も当たりませんが、これを一度に全て壊すには何か別の方法が必要です。
マイクロ波や赤外線は、物を加熱しますが、加熱しすぎて分子を破壊しないかぎり、その電磁波単独で分子を破壊することはありません。一方、紫外線はこれらよりもエネルギーがはるかに大きく、加熱する以前に、これが当たった物質を破壊する作用を起こします。
これがどのようにして起きているか、電子との関係から見てみましょう。
マイクロ波の領域の電磁波は、物質を取り巻く電子雲にゆるやかに働きかけ、この物質分子を回転させる作用をもたらします。電子レンジでは、水分子に特に強く働きかける周波数のマイクロ波を大量にあびせ、加熱対象に含まれる主に水分子を激しく動かして加熱します。しかし、焦がさなければ、材料が分解してしまうことはありません。
赤外線は物質を取り巻く電子に働きかけて、この物質分子全体を振動させる作用をもたらします。こうして赤外線は物質を直接暖める作用をもたらします。これも加熱しすぎなければ、物質を分解することはありません。
塩の粒の入ったビンを回転させるには、ゆっくり回せばよく、また、ゆっくり振れば塩の粒は動かずにびん全体を揺することができます。一方、中の塩粒を動かすには早く動かす、つまり高い振動数で揺する必要があります。
同じようにして、マイクロ波や赤外光よりも振動数の高い可視光や紫外光では、物質分子や原子を構成する電子に直接働きかけます。この結果電子がエネルギーを受けて、原子や分子の中で違う軌道に移ったり(励起)、非常に高いエネルギーを受け取ると、外に飛び出してきます。(光電効果)
マイクロ波、赤外光、可視光、紫外光を受けると、電子が動き、そのエネルギーに応じて分子が回転したり、振動したり、分子や原子の中の電子がエネルギー状態を変えたりします。
上の図は、そうした光や電磁波を受けたときの電子のエネルギー変化を示しています。
基底状態と励起状態の大きく2つの状態が図示されており、これは物質分子や原子中の電子のエネルギー状態の変化を示しています。この変化は、実際にはこの上にいくつかあるのですが、省略して、2つのレベルを示しています。このエネルギー差は大きく、主に可視光から紫外光のような大きなエネルギーを持った電磁波によってこの状態間の遷移はもたらされます。
基底状態でもこの図では4つのレベルに分けられていますが、これは分子の振動状態を示しています。振動が激しいほど大きなエネルギーを持ちますが、電子の状態遷移ほどのエネルギーは必要なく、このエネルギーは主に赤外光の範囲の電磁波によってもたらされます。
また、各振動レベルの間が更に細かく分かれて書かれていますが、これは分子の回転エネルギーを表します。振動よりも更に低いエネルギーで容易に回転し、これは主にマイクロ波の領域の電磁波によってもたらされます。
さて、このように電子が基底状態から励起状態に移るとき、当てられた光から励起に必要なエネルギーが吸収され、これによって励起に必要なエネルギーに相当する波長(振動数)の光が吸収されることとなります。回転や振動のエネルギーレベルも考慮すると、基底状態から励起状態に移るエネルギーが幅を持っており、電子の遷移エネルギー幅を中心として、幅を持った光の吸収帯が形成されることになります。
この電子の遷移エネルギーは、物質や原子によって特定の値に決まっており、複数の値を持っていますが、物質に固有の波長(振動数)の光が、ある幅を持って吸収されることになります。
こうして可視光の領域に吸収帯を持つ物質や原子に光が当たった場合、その光から特有の波長の光が吸収され、吸収されず(透過もせず)反射した光によって色が見えてくることになります。これが、2a−2−2 「光のスペクトル」のところで見たような、光の吸収による色となるわけです。
逆にエネルギーを持った励起状態の電子は、低いレベルに落ちるとき、その差分のエネルギー を、相当するエネルギーを持った波長の光として放出します。
物質を構成する分子は、いくつかの原子の結合によって成り立っており、原子間の結合はこれらの持つ電子を媒介として成り立っていますから、電子が励起されると別の結合の仕方をもたらしたり、別の原子や分子との結合を生じたりします。これが、紫外光や可視光のような高いエネルギーを持つ光によって、物質が変化したり分解したりする理由で、特にエネルギーの大きい紫外光でその性質が顕著になります。
なお、光のエネルギーEはプランクの定数hを用いて
E=h・ν (νは光の振動数)
で表されますから、振動数の高い紫外光の方が可視光よりエネルギーが高く、また、例えば500nmの緑色光は50μmの遠赤外光の100倍のエネルギーを持ち、50μmの遠赤外光は、12.2cmの電子レンジのマイクロ波よりも2440倍のエネルギーを持っていることがわかります。
以上で、色の見える理由がだいぶ見えてきました。
しかし、まだ、なぜきれいな色の着いた物質と着いていない物質があるのか、その説明にはなり
ません。電子が遷移しやすい、動きやすいといった性質が違うようですが、どう違うのでしょう。
また、色が変わるということは、これまでに見てきたようなことがらの何かが変わったらしい、
ということは分かりますが、何が変わったのでしょう。
これを次に見ていくことにします。
さて、光の話が一段落したところで、光を反射させる鏡のお話に関連して、コーヒーブレーク(1)
(クリックするとコーヒーブレーク(1)のページ進みます。↑)
でも眺めて、頭を切り換えてから次に進むことにしましょう。
ブレークの後のお話は「2a−5 反射、透過/屈折、吸光」と題して、いよいよ色の変わる手品のタネに少し関連する内容の話に入っていきます。
ここでは直接の手品のタネ明かしは書かれていませんが、理解するための関連材料として、多少 タネ明かしに関係しておりますので、このページの参照には一定条件の制限がかかっています。悪しからずご了承ください。
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鏡の左右は逆、でも上下はなぜ... 〜 鏡の反射の対称性は? 〜
ふだんは鏡を見ていても不思議なことは何もないですけれど、ちょっとあることに気になると、
頭を悩ませることになります。
鏡をのぞきこんで、写っているものを見てください。
何か字の書いてあるものが最適です。
字は普通に読めますか? こういう字を書くのが得意な方もいるのですが、左右が逆で読みにくいですよね。 でも、なぜ上下は逆になっていないのでしょう。
日本の漢字は、左右対称の字が多いですが、「左右が対称ではなく、上下が対称」になっている漢字は少ないですね。 いくつか思い浮かびますか?
私はやっとこさ、一つ思い浮かびました。こつは、上下左右共に対称な字を探して(これは結構たくさんあります)、これを組み合わせて字になれば完成です。はい、「旧」の字がありました。
もう一つ、左右対称でない、複雑な字を用意してください。私は「複雑」という字を用意してみました。これで準備は完了です。
さて、用意した文字を鏡に写してみましょう。左右が逆になっていますが、なぜ上下は逆にならないのでしょう。
何でも対称が好きな自然ですから、平面の左右だけ特別扱いで、上下は逆にしないのはなんとなく納得できません。でも上下まで逆に見えてしまったら、非常に困るでしょう。これは幸いなことだったかもしれません。
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この答えは意外な所にあります。
自然は完璧です。 絶対に法則を間違ってしまうようなことはありません。(きっと)137億光年の彼方でも、宇宙はここ地上と同じ法則で動いていますし、137億年前も1370億年先も、法則は法則、きっと変わらないのです。 だからこの不思議な現象を起こさせている犯人は、鏡ではなく、自分自身にあるのです。 (きっとと言ったのは、少し自信がないことの日本式表現なのですが。)
この点、同じLAWでも法律は違いますね。 こっそり破れば知らん顔、その代わり、ばれると後が恐いですね。 自然のLAWは、決して破ることができないのです。 法律もそんな仕組みだったら皆が安心して、違反しないで済む社会になるのでしょうけれど。 宇宙が作った法律のような訳には行きませんね。
脱線を元に戻しましょう。
日本のコインを上下正常に見えるようにして裏返すと、上下はそのまま見えますね。
アメリカのコインを持って、同じように裏返してみてください。上下が逆になってしまいましたね。
でも、きっとアメリカの方(かた)は、裏返すと上下が正常になるし、アメリカの方(かた)が日本のコインを裏返すと、上下が逆になってしまうのです。
まだ脱線していますか? ...いえ、これは、次の話の伏線なのです。
鏡に向かい、さっき書いた字を取り上げて、よく見てください。そして、もう一度鏡に写して見てください。ゆっくりやりましょう。
はい、その動作、これがさきほどの「私/あなた自身の問題」なのです。 今、字の下を下にして、左右を回して鏡に映しませんでしたか? これでは、「旧」の字も、「複雑」の字も左右が逆で読めないですね。
それでは、アメリカのコイン式に、上下を持って、上下を逆さまにして、字を鏡に向けてみましょう。
今度は「旧」の字はそのまま「旧」の字に、「複雑」の字は更に複雑になりましたね。つまり、今度は上下が逆さまになって、左右は反対にならなかったのです。
つまり、左右を反対にして見ていたのは「私/あなた自身」だったのです。
でも、まだ2つ、どうにも納得できないことがあります。
(1)さっきは、鏡をのぞき込んだら背景の字が逆に写っていました。なぜでしょうか。
この謎解きは、少々運動になるかもしれません。私は十数年ぶりにあることをするはめになりました。
さて、さっき写っていた文字に、正面から向かい合ってください。この状態から、こんどは後ろにある鏡を通してこの字を見てみましょう。ゆっくりやってください。
はい、その動作、これがさきほどの「私/あなた自身の問題」なのです。
今、足を下にして、左右を逆にして鏡に向かいましたね。どうして上下を逆にして鏡に向かわなかったのでしょう。
これは非常識だからですね。 この上下を逆にする方法を「逆立ち」と言います。
逆立ちして鏡に向かえば、左右はそのままで、上下が逆な字が見えるはずです。体力と平衡感覚に自信のない方はやめておいてください。また、この実験は危険なので自己責任の範囲で行ってください。
字に向かって立ち、背中に鏡を置き、そのまま字の前に手をついて、逆立ちし、鏡に映った字を見てみましょう。今度は上下が逆で、左右がそのままの字が見えますね。 「旧」の字なら、そのまま読めるはずです。そして写った字の下は上に見えていますが、本当は下なんだということは、私/あなたの髪が逆立っていることから分かりますね。
私/あなたの見かけに対して、写った字は上下が逆ですが、地球を中心に見た座標では、字は何も変わっておらず、変わったのは私/あなた自身だったのだ、ということがよく分かります。
(2)それでは、上下も左右も逆にならないように見る方法はないのでしょうか。
簡単です。上下も左右もひっくり返さずに鏡に向けてやれば良いのです。
透明なフィルムに、複雑な字を書いて見ましょう。これを上下も左右も逆にしないよう、そのまま鏡に向け、フィルムの裏を鏡で見てみましょう。 正面から字を見たときと同じように見えますね。
つまり、鏡は実は左右も上下もどちらも反対にはしていないのです。反対にしていたのは「私の/あなたの」動作だったのです。 自然はやはり対称性を好むようです。 そして、私は何か自然の行為に疑問を感じたら、その前に自分を疑うようにすることにしました。
(2’)それでは、更に(2)を発展させて遊んでみましょう。
上下が逆で、左右の変わっていない字は、書くのはかなり難しいですが、やってみると何とか書けますね。それでは、上下も左右も逆な字を書いてみましょう。相当苦心すると思います。
それでは、先ほどの(2)の応用で、こんな字を鏡に写して作るにはどうやったらよいでしょうか。
・・・やってみると、当たり前のことに今更ながら気づきます。(2)と同じように、透明なフィルムに字を書いて、これをそのまま180°回します。上下左右共に逆の字が見えますね。このフィルムの裏側を、そのまま鏡に写してください。
(2)で見たように、鏡を通して裏から見た字は、そのまま表を直接見たのと同じに見えますから、180°回して作った上下左右が逆な字も、そのまま同じ字に見えます。
またまたやってしまいました。 ・・・だんだんややこしくなって、返って訳がわからなくなってきましたので、この辺で次の話に移りたいと思います。
では最後に、鏡に手を振ってしばしの休憩としましょう。
右の手を振りましたか? それならば、鏡の中のあなたも、あなたと同じ右の手を振ったことでしょう。
...私は、ここでまた判らなくなって、(3)番目の「もやもや」が湧いてしまいましたが、それが何だったか、そしてその答えは? そのうちこれらのページを更新していく中で、触れていける
かもしれません。
−−− 要点(かんたんにいうと) −−−
・
・右と左が逆(ぎゃく)に見えるのは、鏡(かがみ)に写す(うつす)ときに右と左を回すからです。
・自分が右と左が逆(ぎゃく)になるように、回って(まわって)見ているときもあります。
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2a−5 反射、透過/屈折、吸光
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現実に見える量子の不思議な世界 〜 量子力学を目で見てみよう 〜
先ほど、可視光のスペクトルと色との関係について見てきましたが、この光とは何でしょう。
一言で言おうとすると苦心しますね。つまり、あの量子力学とかいう、日常世界から考えると、とても理解のできない話に触れない訳にはいかなくなるからです。
で、これを避けて、かつ間違った表現にならないよう気を遣って一言でいうならば、光とは「エネルギーと電磁界の波動を持った量子」なのです。 何ですか、これは?! 意味ががさっぱり判りませんね。 でも粒子とか、波とか決めつけていないところがポイントです。
さて、高校の物理で学びますが、光は次のような性質を持っています。
・波の性質を持って屈折や反射、回折の現象を起こす。
・粒子のように、小分けにすると、これ以上小さくできない最小値(最小エネルギー単位)がある。
・電子は光のエネルギーで活性化し、不連続にエネルギー状態を変える。
・活性化した電子は、光を放出してエネルギーを失い、不連続にエネルギー状態を変える。
そして、授業の結論として、光は波であるとか、粒子であるとか決めつけてはいけないということを言われます。
私たちの良く知っている電子も同じような量子で、波のように回折を起こし、最小単位を持ち、おまけに、物質の中で存在している場所も特定できません。電子の存在位置は確率で表し、場所を決めつけてはいけないと言われます。
これが量子力学の出発点であり、また、特定の性質を持った物質を自由に設計することができる基本の理論である「量子化学」の出発点です。日常では理解できない話ですが、原子・分子のミクロな世界の常識として、そのようになっていると妥協するしかなさそうです。
しかし、本当にそれは真実なのか疑ったとき...、この常識を越えた世界が目で見られる現象があるということで納得しましょう。
世の中で最も不活性な物質であるヘリウム、これは絶対0度でも液体でいられる唯一の物質です。これをどんどん冷やしていくと、4.2K(ケルビン)で液体になります。この液体ヘリウムTはそれで面白いことがたくさんあるのですが、ここでは更に冷やしてみましょう。
2.17K以下になると、突然様子が変わります。超流動と言い、容器に入れた液体ヘリウムU(L.HeU、2.17K以下の液体ヘリウム)は、その流体抵抗が0になります。
一旦回転させたL.HeUは永久に回転し続け(角運動量保存則を考慮するならば、Uになる前に回転させた方がよさそうです)、流体の抵抗がなくなった結果、L.HeUは非常に薄い膜となって、ビーカーの壁をよじ登り、外側に流れてきます。(灯油ポンプの原理で低い方に流れる。)これは理想の潤滑剤!!?と思った方、答えは×です。L.HeUを使っては、潤滑剤が何もないのと同じになります。
2.17K以上では、He原子が一個一個独立して運動し、壁面と衝突して抵抗を与えていたものが、この温度以下を境に、原子の集団で行動を起こすようになり、壁面との摩擦がなくなるものと説明されています。これはまさに、量子力学の世界がマクロに見えている現象なのです。
(Bose-Einstein凝縮と言います。He原子の量子の世界を目の当たりにしているわけです。ここで、正確には、2.17K付近では、超流体と常流体が混ざった状態になっています。)
この超流動、他にも熱が音速に近い速度で伝わる(0.5K付近では150m/sほどの速度で熱が伝わります。)など、信じられない現象があります。これは、温度差ができそうになると、そうならないように、超流体成分が流れて均一な温度になろうとすることが原因で、一端の温度を振動させると、音と同じような波(第二音波と呼ぶ)ができ、壁に反射して定在波ができたりもします。
このL.HeUの中では、音は238m/sほどの速度で進みます。空気中の音速330m/sよりも少し遅い速度ですが、このL.HeUの音の伝搬についても際だった特性があります。
光では周波数(振動数)が高いほど、高いエネルギーを持っているという話がありましたが、同じように音も高い周波数ほど大きなエネルギーを持っています。超音波で堅い石を砕いたりできるのもそうした高いエネルギーによるものです。しかし、通常の媒質中を伝わる音は、それが高い周波数(音程で言うなら高い音)であるほど、減衰が激しく遠くまで伝わらなくなります。エネルギーが高いために、途中で吸収されて、熱など別のエネルギーの形態に変わってしまうのです。ところが、L.HeUは流体抵抗がありませんから、これを減衰させる相手がなく、非常に高い周波数の音まで伝わります。私たちが標準に用いているAの音は440Hzですが、これを23オクターブ上げた音はおよそ3.5GHzとなります。この程度の音までは減衰せずにL.HeUの中を通って伝わっていることが観測されているようです。 理論から考えても、100GHz(音速238m/sから逆算すると音の波長2.38nmになります。)程度の周波数の音までは、減衰せずに伝わるようです。
また、量子の世界の話に戻って、1/400K以下に冷やした液体3ヘリウムUは、その中に生じた渦の強さが飛び飛びの値しか取ることができないという、まさに量子力学の現象を示すとのことです。
というように、この量子の世界、波でもない、粒子でもない、そのような「光」や「電子」や「原子」といったものが存在している、それは事実だ、と妥協するしかなさそうです。
ところで、筆者は学生時代から不思議なものが好きでありまして、研究課程では超電導を専門にやっておりました。 液体ヘリウムTで導体から超電導体を作って、電磁界や熱伝搬などを調べていましたので、この液体ヘリウムではずいぶんと遊ばせて(研究させて)いただいたものです。
この超電導も、電子が同じように凝縮を起こし、流れる際に、原子に対して抵抗を持たなくなって現れる現象で、これも量子の世界がマクロに観測できるようになったものです。
筆者が学生の頃は、液体窒素で超電導になるようなものは、まだ世の中に発見されておりませんでしたが、量子の世界もなんと簡単にその扉を開くようになったものだと思います。また、最近では、分子設計によって(例の量子化学を駆使しているのでしょうか)、銅などを含む特殊な有機物質が、10K付近で超電導になる、そんな自然界にはない物質まで作り出されているといった状況のようです。
液体窒素温度程度で超流動になるようなもの(高温超流動)は現在発見されていませんが、超電導は電子対が凝縮したもの、超流動は原子が凝縮したものですから、高温超電導に続いて、こんな高温超流動みたいなものが出てきたら...わくわくしますね。(こんなことを言うと、ご専門の方には「何もわかっとらん」と怒られそうですけれど。電子と原子では全然質量が違いますから。また、L.N2温度の超電導は電子の凝縮だけでは現象を説明できない面があるそうです。)
いずれにしてもこの世界、まだまだこれから面白いことがたくさんありそうですね。
−−− 要点(かんたんにいうと) −−−
・光には海(うみ)の波(なみ)と同じ性質(せいしつ)があります。
・この波(なみ)の様子(ようす)と、見える色(いろ)には関係(かんけい)があります。
・自然(しぜん)には不思議な(ふしぎな)物質(ぶっしつ)があって、入れものに入れておくと、
壁(かべ)を伝わって自然に(しぜんに)外に出てきてしまう液体(えきたい)があります。
・この不思議(ふしぎ)のわけは、量子力学(りょうしりきがく)という科学(かがく)を勉強(べん
きょう)するとわかります。 わかるというよりも、こうなっていると考える(かんがえる)しかな
いような、本当だけれども理解(りかい)することがとても難しい(むずかしい)学問(がくもん)
です。
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2a−7 色の変わるわけ(1)
3項 に示す手続によって、パスワードで入ってください。
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補助解説: 大きな数
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2a−8 コーヒーブレーク 3
花の色
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2a−9 色の変わるわけ(2)
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2a−10 コーヒーブレーク 4
拡散
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2a−11 まとめ
3項 に示す手続によって、パスワードで入ってください。
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2b 高分子の科学
−−− 要点(かんたんにいうと) −−−
・私たち(わたしたち)自身(じしん)もタンパク質(たんぱくしつ)という高分子材料
(こうぶんしざいりょう)でできています。
・周囲(しゅうい)には高分子材料(こうぶんしざいりょう)がたくさんありますが、
地球(ちきゅう)から外に出ると、高分子(こうぶんし)というものはほとんどありま
せん。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
私たちの身の周りには、自然のもの、人工的なものを含めて、さまざまな高分子材料であふれています。
高分子材料の最も身近なものは何でしょう。 身近なというよりは、私たちの身自身ですが、体を作っているタンパク質あるいは生命情報を乗せているDNAが最も身近な高分子と言えるでしょう。 他にも植物の体を形作るセルロース、木材、紙、衣服を作っている繊維、食べ物では米の主栄養成分「でんぷん」、海藻からとれる「寒天」(アガロース)など、生物由来のものはほとんど高分子材料でできているといってもよいくらいです。(歯・骨や貝殻は、それぞれリン酸カルシウム、炭酸カルシウムでできています。高分子ではありません。) また、プラスティック、合成繊維、合成ゴムなどヒトが人工的に作り出したものにもたくさんの高分子材料があります。
これらの共通の特徴は、生物がその営みの中で、あるいはヒトが知恵を絞って作り出したものということで、その生成には生命の関わりがあるということです。
最も単純な生命体に「ウイルス」があります。 これはDNA(デオキシリボ核酸)と、これを包むタンパク質の膜を主なパーツとしてできており、他の生物の細胞にとりつかないと、自分自身だけでは何も活動できず、活動・増殖をしていないときには、ほとんど生物なのか単なる生命情報の詰まった物質なのか分からないような不思議な「生き物」ですが、基本部分のDNAと外膜のタンパク質は立派な高分子材料です。
これだけ高分子の物質にあふれた地球の環境ですが、ひとたび大気圏外の宇宙に出ると、高分子化合物は極めて極めて希なものになります。宇宙を形成している物質の99%あるいは一説では99.9%がプラズマであると言われており、固体、気体は残りのごくわずか、液体は更にわずかなものとなります。物質の3態(=固体、液体、気体)などと言われますが、宇宙全体では3態の状態にあるものは極めて少なく、ほとんどは4態目の「プラズマ」なのです。そして高分子化合物などというものは地球外にはほとんどなさそうです。(隕石からアミノ酸が検出されたというニュースも聞きますし、原始生命は自然に合成されたアミノ酸からできたタンパク質が元であると言われていますので、「ない」とも言えないようです。)
私たちがふだん何気なく食べている「米」ですが、宇宙の中で同じ材料物質(デンプン)を探すのは、海岸の砂浜で、小さいダイヤモンドのかけらを見つけるよりも難しいことでしょう。
2b−1 高分子とは
−−− 要点(かんたんにいうと) −−−
・高分子(こうぶんし)とは、たくさんの原子(げんし)がつながってできたものです。
その数(かず)がだいたい1000以上で、高分子(こうぶんし)と呼(よ)ばれるよ
うになります。
・昆布(コンブ)に含まれているアルギン酸(さん)という物質(ぶっしつ)も高分子(
こうぶんし)で、炭素(たんそ)、酸素(さんそ)、水素(すいそ)が鎖(くさり)のよう
にたくさんつながった形をしています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
高分子とは、一般的には「多数の原子が共有結合してできる分子」として定義され、原子の数が千個程度以上、あるいは分子量で1万程度以上であれば典型的な高分子とみなされています。 共有結合とは、「2個の原子が電子を共有して作る化学結合」で、両原子間の結合線には1組の電子対が対応しています。 このような多数の原子を共有結合で連結できる元素は、炭素やケイ素、酸素などに限られるので、ほとんどの高分子は炭素またはケイ素、酸素の鎖が骨格になっています。
なお、共有結合には一重の結合( σ 結合)、二重結合( σ 結合+ π 結合)、三重結合( σ 結合+ 2個の π 結合)などもあり、 π
結合は、「2a−5 反射、透過/屈折、吸光」(パスワードページ)で触れたように、分子の発色に重要な役割を演じています。 共有結合以外の結合には、イオン結合(クーロン力による結合)、金属結合などもありますが、共有結合は最も結合エネルギーの高い強い結合です。 ダイヤモンドは最も硬い結晶ですが、これは炭素原子が共有結合でしっかりした結合を作って、このような硬い結晶となっています。
ここではまず、1−11a「七色のぶどう」で主役を演じている、高分子化合物材料「アルギン酸」の構造について見てみましょう。
アルギン酸は自然界には海藻(海草)「こんぶ」に含まれていることで知られ、コンブの体を柔軟に、しかもしっかりと支えるための成分として重要です。 このアルギン酸は文字どおり「酸」で、通常はそのままの「酸」の形ではなく、ナトリウム塩やカルシウム塩の形で存在しています。 アルギン酸ナトリウムでは通常水溶液、アルギン酸カルシウムの場合には、通常固形物となっています。
アルギン酸の構造を以下の図に示します。 各2本以上の線の交点には炭素原子Cが一個存在するものと見てください。(また、3本の線の交点には、図示されない4本目の線 −H(水素) が省略されています。)
このように、アルギン酸は炭素Cの骨格に酸素O,水素Hがつながり、この基本形が繰り返しつながってできているものです。 この中で −COOH となっている部分が「酸」の特徴を持っている要因で、わずかですが −COO と H+に電離して酸の性質を示します。 アルギン酸ナトリウムでは、この水素HがナトリウムNaに置き換わって −COONa となったもの、アルギン酸カルシウムは2個の水素と置き換わって −COO
Ca OOC− と2箇所の −COOH をつなげてできたものです。
2b−2 アルギン酸が固まるわけ
−−− 要点(かんたんにいうと) −−−
・昆布(コンブ)に含まれているアルギン酸(さん)という物質(ぶっしつ)は、
カルシウムという物質(ぶっしつ)があると、それを橋(はし)のように使っ
て、たくさんのアルギン酸(さん)がつながります。
・こうして、たくさんのアルギン酸(さん)がつながると、柔らかい(やわらかい)
ゼリーのようなものになって固まります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
アルギン酸ナトリウムはNaの電子対の腕が1本なため、 −COOH のHと入れ替わるだけでした。 この状態で水に溶かせば、水溶液となっています。 ところが、先ほどアルギン酸カルシウムで見たように、カルシウムでは電子対の腕が2本あるために、2箇所の −COOH基をカルシウムイオン(Ca2+)を橋(媒介)として結びつけることになります。
下の図はそのことを表したもので、2本のアルギン酸の鎖を、その横でCa2+が媒介になって(クーロン力で)結びつけています。
カルシウムイオンCa2+が十分にあると、この橋がたくさんできますから、一本の鎖だったアルギン酸は、多数結びついて固まっていきます。 この一部を絵にしたのが右の図で、こうした構造をegg
box junction(エッグボックスジャンクション)と言います。 右の絵と上の絵は等価です。
このegg box junctionは、2本のアルギン酸の鎖しか描かれていませんが、実際にアルギン酸カルシウムが固まった状態では、たくさんのアルギン酸分子が、このような構造でつながっています。
1−11a「七色のぶどう」で演出しているのは、塩化カルシウム水溶液にアルギン酸ナトリウム溶液を滴下して、このegg box junctionを瞬時に外皮に作り、この液滴を固めた粒です。 時間が経つと、カルシウムイオンは内部に浸透して、中の方まで固まっていきます。 少し固まり始めた状態で取り出すと、カルシウムがまだ十分置き換わっていないため、少し柔らかめのゼリーのような感じですが、時間が経って中の方まで固まると、ちょうど寒天のように、やや固めで「さくい」感触の粒になります。
アルギン酸ナトリウムのナトリウムは、カルシウムと入れ替わりに水溶液側に溶け出していきますので、粒の滴下をずっと続けますと、塩化カルシウム溶液は塩化ナトリウム(食塩)の溶液に入れ替わっていきます。 塩化カルシウムの濃度が下がってきますと、アルギン酸の相手になるカルシウムイオンが来るのを待つ時間が長くなりますので、固まり方が悪くなってきます。
では、この辺でアルギン酸の話を一段落して、その他の高分子を見てみましょう。 アルギン酸の話の続きは、「2b−4 Appendix ストロンチウム他による固化」で再開することにします。
2b−3 高分子材料いろいろ
−−− 要点(かんたんにいうと) −−−
・高分子材料(こうぶんしざいりょう)は、やわらかいものだけではなく、
鉄(てつ)よりも固くて、軽くて(かるくて)、丈夫なものもあります。
・光で伸び(のび)縮み(ちぢみ)する繊維(せんい)、酸素(さんそ)を
より分ける高分子膜(こうぶんしまく)、など、他にも(ほかにも)いろ
いろあります。
・この高分子(こうぶんし)の分野(ぶんや)は、多くの研究者(けんきゅ
うしゃ)の方が取り組んでいる(とりくんでいる)、おもしろくて将来(し
ょうらい)更に(さらに)伸びる、人の役に立つものが多い分野です。
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私たちは、朝、目覚まし時計の音で飛び起き、外に出れば日のまぶしさに目を細め、外を一歩ずつ間違えずに足を動かして器用に歩きますが、これらの動きは全て化学反応(電気化学反応を含む)でなされています。 何かの都合で体に電子回路や機械部品を入れている場合もありますが、人は生まれてきたときには電気部品・機械部品を持っておらず、私たちの動き、情報の収集、環境変化への反応/適応は、全てこうした電気化学を含む化学反応でなされているのです。
自然界にはいろいろな色の花があり、美しい色の貝があり、芳香を持った花があり、実ったタネからは芽が出て、やがてまた花が咲きますが、こうした色素、芳香成分、発芽機構は、全て生体内の触媒(高分子たんぱくでできているものが多い)などを駆使して、通常の常温常圧では起こらないような化学反応を迅速に進ませ、生物が何かの目的を持って「苦心して」作り出しているものなのです。
私たちが、目的を持って行動し、その日の活動が終わると家に帰ってきて、一杯飲んでくつろいでいるのも、全て化学反応によってなされているのですから、考えてみるとこれは「不思議な世界」以外の何物でもありません。 自分自身の構造でもあることながらも、全く良くできているな、と感心してしまいます。
さて、こうした環境の変化、外部の情報をとらえ、この状態に応じた反応・動作を、物質自身の特性として行うような材料が自由に設計できたら、この世界の様子もずいぶんと変わるでしょう。
高分子を研究されている方は世界中に多くいらっしゃいますが、この方々の一つの大きな目標は、こうした「目的とした性質を持った高分子材料」を自由に設計すること、想定した外界の刺激に対して「予定された反応を示すような材料」を提供する、というようなことが挙げられています。 この分野はこれからもどんどん伸び、人の生活が便利になったり、快適になったり、安全になったりするような、身近な人の役に立つものが多く出てくる研究分野です。
そして生物は、まさにこうした目的とした性質を持った物質を自身で合成し、想定した外界の変化、刺激に適切に反応するようにできており、生物から学ぶことは非常に多いのです。
さてこうした高分子の分野ですが、範囲が非常に広いので、まずはおもしろそうなトピクスを2、3挙げてみることにします。
時間を見て、記事を追加していけるかもしれませんし、筆者も高分子材料を使って、例によって「何かおもしろそうなものを作れないか」と考えていますので、後はそうしたものが見えてきたら、またこのHOME、1項
手品のコーナでご紹介できるかもしれません。
固くて軽い高分子繊維
高分子材料というと、弾力があって柔らかいものを連想しますが、これは分子の連なった鎖が幾重にも折り重なって、この重なりで加えられた張力を吸収しているためです。 分子間の結合力というものは非常に強いですから、この鎖が曲がらないようにして一列に並べ、これをたくさん束ねると、軽くて非常に強い線を作ることができます。
このような高分子材料でできた繊維の中には、普通の鉄よりも固く強い材料もあります。 防弾チョッキや高性能タイヤの主補強材料に使われているケブラーがその代表選手で、これは軽い上に固いという特徴を生かして、軽く作ることが重要なテーマの宇宙航空分野でも使われます。 筆者もそんな分野に従事した経験があるので、ケブラーの余った切れ端をはさみで切ろうとして、全く歯が立たないのに驚いた記憶があります。
例えば、こうした固い高分子材料の代表選手ケブラー(アラミド繊維)は、本質的に折れ曲がりにくい構造を持った高分子鎖を束ねて一本の線(繊維)にしたもので、物が切れ始めるきっかけとなる最も弱い欠陥部分も少ないため、格子欠陥の多い通常の鉄線よりも固い(硬い)、強い繊維になります。(もちろん格子欠陥のない鉄線も得られており、こちらはもっと強いものになります。)
光で伸縮する高分子繊維
パスワードで入るページの中で、以下のような「アゾベンゼン」という物質を紹介しています。このパスワードページでアゾベンゼンを取り上げたのは別の意味なのですが、ここでは「光で伸縮する高分子」の設計に利用できるという観点で取り上げてみたいと思います。
このアゾベンゼンという物質は、通常に存在するのは上左側のtrans-アゾベンゼンの方で、これは橙赤色をした葉状結晶の物質です。 上の図に示したように、このtrans-アゾベンゼンに313nm付近の紫外光を当てると、分子の形態が変わり、上右側のcis-アゾベンゼンに変わります。 cis-アゾベンゼンは436nm付近の青色可視光を当てるか、加熱すると、再び元のtrans-アゾベンゼンに戻ります。
trans-アゾベンゼンは分子の長さが9オングストローム(0.9nm)、cis-アゾベンゼンは5.5オングストローム(0.55nm)ですから、この分子構造を高分子の鎖の中の基幹部分にうまく取り込んでやれば、青色可視光/紫外光で伸び縮みする高分子材料が設計できることが期待されます。 こうした光で伸縮する高分子材料は実際に作られています。 こうした材料を使えば、メカトロニクスを使わなくても、紫外線の強い日には、自然に肌を強く保護する機能を持った服や帽子などが設計できそうですね。
酸素をより分ける高分子膜
通常、空気の中の酸素は約21%、約1/5が酸素ですが、酸素濃度が高ければより少ない吸気量で必要な酸素が確保できますから、(程度によりますが)呼吸は楽になります。 部屋の酸素濃度を高くする機能を持ったエアコンなども出ていますが、どうやって酸素濃度を高めているのでしょう。
ほとんどの高分子膜は、空気中の窒素の透過速度と酸素の透過速度を比べると、酸素の方が高いのですが、その程度は高分子の種類によって桁違いになります。 (といっても、酸素だけを吸おうなどと考えて、高分子膜をかぶったりしないように注意してください。 透過する酸素の絶対量が、呼吸に必要な量を全く満たさないので、呼吸できなくなります。) 高分子膜を酸素が通過するというのは、高分子膜の材料の中に酸素が一旦溶けて、反対側から出てくるというように理解した方が分かり易いでしょう。
酸素の透過しやすい、高分子繊維間のすき間の広い高分子材料に、シリコンゴムに似た材料で「ポリジメチルシロキサン」という材料があります。 これは、基本骨格が炭素ではなく、ケイ素(シリコン
Si)と酸素の鎖でできており、周囲にメチル基( −CH3 )をちりばめた構造を持っています。 この材料は酸素の選択透過特性に優れており、欠点の強度を別の材料膜で補って、医療用酸素製造器や、酸素透過性ソフトコンタクトレンズ、燃料等の防爆充填用窒素製造、半導体関連の窒素供給などに利用されています。
これらの他にも、いろいろな気体を分離する膜、液体を分離する高分子、反応触媒を基本鎖に結合させた化学反応促進高分子材料、形状記憶高分子、温度に反応する高分子、自然分解性プラスティックなど、おもしろい材料がたくさんあります。
筆者も、人の生活を豊かにし、非常におもしろいものの多い、この分野の発展を願っている一人なのであります。
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2b−4 Appendix ストロンチウム他による固化
−−− 要点(かんたんにいうと) −−−
・アルギン酸(さん)とカルシウムで、「つぶつぶの固まり(かたまり)」
ができましたが、カルシウムととても似た(にた)性質(せいしつ)の
あるマグネシウムやストロンチウムでもつぶつぶはできます。
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さて、話は戻って、先ほど2b−2で見てきた「液体がつぶつぶの固体に変わる」、アルギン酸カルシウムのこの現象ですが、カルシウムイオン(Ca2+)とアルギン酸ナトリウムで、液体からこのような固形物ができることは良く知られており、いろいろな図書、出版物に記載されています。
しかし、ここではこれだけで終わってはおもしろくありません。 せっかく「科学であそぼう」としているわけですから、もう一つ浮かんできた疑問の答えを実験で確認してみましょう。
カルシウムと周期律表で同じ列に位置するマグネシウムイオン(Mg2+)、これは豆腐を固める「にがり」に含まれていたり、下剤に利用されたり、また一方では、植物の葉緑素の中心をなしている重要な元素です。 このマグネシウムイオン(Mg2+)や、同じ周期律表の縦仲間のストロンチウムイオン(Sr2+)をカルシウムイオンの代わりに用いた場合どうなるか見てみましょう。
ストロンチウムはあまり聞き慣れない元素ですが、花火を炎色反応で赤くしたりするのに使われている元素です。 ウラン235が核分裂(中性子を吸収してウラン236になり分裂する)を起こすときに、放射性同位元素のストロンチウム89,90(89Sr,90Sr)が出てくることでも知られており、こちらの同位体は放射能を帯びて有害ですが、一般に入手可能なストロンチウム化合物(88Sr、86Sr、87Sr、84Srのそれぞれ82.6%, 9.9%, 7.0%、 0.5%の混合物)は放射能を持っていません。 (こうした88Sr以外の原子も含まれているため、ストロンチウムの原子量は87.62という中途半端な数値になっており、例えば酸素(=16.00)のように88.00ぴったりにはならないのです。)
話が脱線しましたが、マグネシウムやストロンチウムを用いた場合は、周期律表から予想されたように固化し、マグネシウムでは柔らかめ、ストロンチウムでは堅めになります。マグネシウムでは、カルシウムの場合と同じイオン濃度ではしっかりと固化せず、取り出すとくずれてしまうので、形状を保つにはMg濃度を高くする必要がありました。 なお、ストロンチウムイオンで固化した様子は下の写真を見てください。(カルシウムイオンの場合と同じイオン濃度として滴下しています。 着色すると金属イオンによる着色がある場合にそれが見えないので、無着色で行っています。)
Sr2+イオンによって固化 Ca2+イオンによって固化
(写真をクリックすると拡大表示します。)
2b−5 Appendix さらに他の金属イオンでは
−−− 要点(かんたんにいうと) −−−
・アルギン酸(さん)と、マグネシウムやストロンチウムでも、「つぶつぶ
の固まり(かたまり)」ができましたが、他の(ほかの)金属(きんぞく)
イオンではどうでしょうか?
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アルギン酸が固化するのは、アルギン酸の高分子がカルシウムイオンなどを媒介として結合したためだということを見てきましたが、同じように2本の腕を持つ銅イオン(Cu2+)やニッケルイオン(Ni2+)、マンガンイオン(Mn2+)、鉄イオン(Fe2+)を用いた場合はどうなるでしょうか。周期律表では全く違う列に位置していますが、どのような性質がポイントなのでしょうか。
同じ鉄イオンでも3価のもの(Fe3+)もありますね。これを用いた場合はどうでしょう、固まるでしょうか。鉄の3本の腕に3本のアルギン酸が結合して更に高分子となって固化するのでしょうか。更に3価の金属イオン代表選手アルミニウムイオン(Al3+)ではどうでしょうか。
4価のイオンもあります。チタンイオン(Ti4+)ではチタン原子を中心に4本のアルギン酸が結合するでしょうか。
別の意味で興味があるのは、ナトリウムやカリウムと同じような、腕が1本の金属イオンです。 銅は通常2価のイオンを形成しますが、酸化状態によっては1価の状態をとります。 このような容易に酸化/還元される性質を持っていることから、酸化還元の触媒として使うこともあります。 ここでは、純粋に一価の銅イオンだけを得ることは難しいので、周期律表で銅と同じ系列ですが、通常の状態では1価のイオン銀ではどうなるか試してみましょう。 ナトリウムなどと同じように、アルギン酸の高分子に一本の腕でぶら下がるだけなので、固まらないというのが答えでしょうか?...
これらを、それぞれのイオンを含む溶液で、カルシウムの場合と同じように、それらのイオン濃度が同じになるようにして試してみました。
この結果は.....?
まずは、この手品(のようなもの?)を持っていらっしゃる方々だけの、共通のお話ということにしておきましょう。...
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この続きは、手品のパスワードから入った目次の同じ2節 2b「高分子の科学」の記事の続きとして参照することができます。
1−11a「七色のぶどう」に同梱された説明書にもパスワードが記載されていますが、他の手品のパスワードから入っても同様に参照することができます。 また、逆に、他の手品用解説(例えば「色の変わるわけ(1)、(2)」など)は、1−11a「七色のぶどう」に同梱された説明書のパスワードからも参照可能です。
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炭酸ガス圧で推進する
ロケットを作ってみました。
作り方は簡単ですが、間違えるとペットボトルが破裂したりして危険なので、大人の方に見てもらって、原理を考えながらやってみてください。(飛んできたペットボトルや栓でけがをしたり、衣服を水浸しにしたり、あわてて逃げる際に転んだり、ペットボトルが破裂して破片でけがをしたり、と悪い事態も想定されますが、当方では責任を負いかねますので、やってみる場合には、自身の責任で実施ください。)
原理:
ペットボトルの中で、炭酸ガスの発生する反応を起こさせ、ガス圧を蓄えて一気に中の水と共に噴き出させて推進力を得ます。
ペットボトルと外れやすい栓を用意します。ペットボトルに、水を入れ、その中に混合すると炭酸ガスの発生する薬品(重曹とクエン酸がよい)をに入れ炭酸ガスを発生させ、すばやく
栓をします。中のガス圧が高まると栓が外れ、ガスに押されて水が噴き出し、その反作用でペットボトルが飛びます。
入れる水が多いと、圧力を蓄える空間が狭いためすぐに栓が外れて飛んでしまいます。また、水がたくさん入って重い状態で飛び出すので、あまり飛びません。 逆に水が少ないと、圧力を蓄える空間が大きいためなかなか栓が外れず、飛ばずに失敗する危険性が高くなります。しかし逆に飛ぶときは、栓が外れた瞬間に多くの水が噴出して、高い推進力が得られると同時に、中の水は瞬間的に噴き出して軽くなったペットボトルを推進するため、たいへん良く飛ぶようになります。
水が少なすぎると、なかなか栓が外れないのは同様ですが、さらに栓が外れたときに噴出する水が少ないため、推進力が十分得られず、あまり飛ばなくなってきます。
このバランスが重要です。
注意事項:
(1)飛ばずに失敗したペットボトルを処理するには、水を張ったバケツに沈めて、ボトル周囲を
押すと点眼栓が外れます。取れないときは、同様に水中で点眼栓をラジオペンチなどで挟
んで引っ張り、外せば安全に処理できます。その前に、目などに安全めがね、塗れてもよ
い服、ゴム手袋などの手を保護するものを用意して、ペットボトルに雑巾を巻き、手をゴム
手袋などで保護します。
(2)「飛ばないな」と思って近寄ると、突然飛んで、栓が当たったり、中の水がかかることがありま
す。
(3)噴出口から栓が飛びます。噴出口を人に向けたり、ペットボトルを人に当てないよう注意くだ
さい。
(4)クエン酸は市販の小さな粒状結晶状のものが良く、溶けにくいためガス発生が遅く、飛ぶ前
に近くから逃げる時間が確保できます。 入れてすぐに溶けてしまう粉状のクエン酸では、
ガスの発生が早く、飛ぶ前に逃げる時間が十分確保できません。
(5)重曹、クエン酸、これらの溶液などを目や鼻等に入れないようご注意ください。目や鼻にしみ
ます
方法詳細例:
例えば、本サイトで示したものは、以下の材料と方法で行っています。