~不思議な色の世界~    解説

要旨は最後に記載されています。

 ふだんは鏡を見ていても不思議なことは何もないですけれど、ちょっとあることに気になると、頭を悩ませることになります。

 鏡をのぞきこんで、写っているものを見てください。
 何か字の書いてあるものが最適です。
 字は普通に読めますか? こういう字を書くのが得意な方もいるのですが、左右が逆で読みにくいですよね。 でも、なぜ上下は逆になっていないのでしょう。

 日本の漢字は、左右対称の字が多いですが、「左右が対称ではなく、上下が対称」になっている漢字は少ないですね。 いくつか思い浮かびますか?
 私はやっとこさ、一つ思い浮かびました。こつは、上下左右共に対称な字を探して(これは結構たくさんあります)、これを組み合わせて字になれば完成です。はい、「旧」の字がありました。
 もう一つ、左右対称でない、複雑な字を用意してください。私は「複雑」という字を用意してみました。これで準備は完了です。

 さて、用意した文字を鏡に写してみましょう。左右が逆になっていますが、なぜ上下は逆にならないのでしょう。
 何でも対称が好きな自然ですから、平面の左右だけ特別扱いで、上下は逆にしないのはなんとなく納得できません。でも上下まで逆に見えてしまったら、非常に困るでしょう。これは幸いなことだったかもしれません。

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 この答えは意外な所にあります。

 自然は完璧です。 絶対に法則を間違ってしまうようなことはありません。(きっと)137億光年の彼方でも、宇宙はここ地上と同じ法則で動いていますし、137億年前も1370億年先も、法則は法則、きっと変わらないのです。 だからこの不思議な現象を起こさせている犯人は、鏡ではなく、自分自身にあるのです。 (きっとと言ったのは、少し自信がないことの日本式表現なのですが。)

 この点、同じLAWでも法律は違いますね。 こっそり破れば知らん顔、その代わり、ばれると後が恐いですね。 自然のLAWは、決して破ることができないのです。 法律もそんな仕組みだったら皆が安心して、違反しないで済む社会になるのでしょうけれど。 宇宙が作った法律のような訳には行きませんね。
 脱線を元に戻しましょう。

 日本のコインを上下正常に見えるようにして裏返すと、上下はそのまま見えますね。
 アメリカのコインを持って、同じように裏返してみてください。上下が逆になってしまいましたね。でも、きっとアメリカの方(かた)は、裏返すと上下が正常になるし、アメリカの方(かた)が日本のコインを裏返すと、上下が逆になってしまうのです。
 まだ脱線していますか? ...いえ、これは、次の話の伏線なのです。


 鏡に向かい、さっき書いた字を取り上げて、よく見てください。そして、もう一度鏡に写して見てください。ゆっくりやりましょう。
 はい、その動作、これがさきほどの「私/あなた自身の問題」なのです。 今、字の下を下にして、左右を回して鏡に映しませんでしたか? これでは、「旧」の字も、「複雑」の字も左右が逆で読めないですね。
 それでは、アメリカのコイン式に、上下を持って、上下を逆さまにして、字を鏡に向けてみましょう。
今度は「旧」の字はそのまま「旧」の字に、「複雑」の字は更に複雑になりましたね。つまり、今度は上下が逆さまになって、左右は反対にならなかったのです。
 つまり、左右を反対にして見ていたのは「私/あなた自身」だったのです。
 でも、まだ2つ、どうにも納得できないことがあります。

(1)さっきは、鏡をのぞき込んだら背景の字が逆に写っていました。なぜでしょうか。
  この謎解きは、少々運動になるかもしれません。私は十数年ぶりにあることをするはめになりました。
  さて、さっき写っていた文字に、正面から向かい合ってください。この状態から、こんどは後ろにある鏡を通してこの字を見てみましょう。ゆっくりやってください。
  はい、その動作、これがさきほどの「私/あなた自身の問題」なのです。 今、足を下にして、右を逆にして鏡に向かいましたね。どうして上下を逆にして鏡に向かわなかったのでしょう。
  これは非常識だからですね。 この上下を逆にする方法を「逆立ち」と言います。

  逆立ちして鏡に向かえば、左右はそのままで、上下が逆な字が見えるはずです。体力と平衡感覚に自信のない方はやめておいてください。また、この実験は危険なので自己責任の範囲で行ってください。
  字に向かって立ち、背中に鏡を置き、そのまま字の前に手をついて、逆立ちし、鏡に映った字を見てみましょう。今度は上下が逆で、左右がそのままの字が見えますね。 「旧」の字なら、そのまま読めるはずです。そして写った字の下は上に見えていますが、本当は下なんだということは、私/あなたの髪が逆立っていることから分かりますね。
  私/あなたの見かけに対して、写った字は上下が逆ですが、地球を中心に見た座標では、字は何も変わっておらず、変わったのは私/あなた自身だったのだ、ということがよく分かります。

(2)それでは、上下も左右も逆にならないように見る方法はないのでしょうか。
  簡単です。上下も左右もひっくり返さずに鏡に向けてやれば良いのです。
  透明なフィルムに、複雑な字を書いて見ましょう。これを上下も左右も逆にしないよう、そのまま鏡に向け、フィルムの裏を鏡で見てみましょう。 正面から字を見たときと同じように見えますね。
 
  つまり、鏡は実は左右も上下もどちらも反対にはしていないのです。反対にしていたのは「私の/あなたの」動作だったのです。 自然はやはり対称性を好むようです。 そして、私は何か自然の行為に疑問を感じたら、その前に自分を疑うようにすることにしました。

(2’)それでは、更に(2)を発展させて遊んでみましょう。
  上下が逆で、左右の変わっていない字は、書くのはかなり難しいですが、やってみると何とか書けますね。それでは、上下も左右も逆な字を書いてみましょう。相当苦心すると思います。
  先ほどの(2)の応用で、こんな字を鏡に写して作るにはどうやったらよいでしょうか。
  ・・・やってみると、当たり前のことに今更ながら気づきます。(2)と同じように、透明なフィルムに字を書いて、これをそのまま180°回します。上下左右共に逆の字が見えますね。このフィルムの裏側を、そのまま鏡に写してください。
  (2)で見たように、鏡を通して裏から見た字は、そのまま表を直接見たのと同じに見えますから、180°回して作った上下左右が逆な字も、そのまま同じ字に見えます。
  またまたやってしまいました。 ・・・だんだんややこしくなって、返って訳がわからなくなってきましたので、この辺で次の話に移りたいと思います。


  では最後に、鏡に手を振ってしばしの休憩としましょう。
  右の手を振りましたか? それならば、鏡の中のあなたも、あなたと同じ右の手を振ったことでしょう。
  ...私は、ここでまた判らなくなって、(3)番目の「もやもや」が湧いてしまいましたが、それが何だったか、そしてその答えは?  そのうちこれらのページを更新していく中で、触れていけるかもしれません。
 

--- 要点(かんたんにいうと) ---

かがみは右左(みぎひだり)も、上下(うえした)も何も逆(ぎゃく)にしてはいません。
 
・右と左が逆(ぎゃく)に見えるのは、鏡(かがみ)に写す(うつす)ときに右と左を回すからです。
 
・自分が右と左が逆(ぎゃく)になるように、回って(まわって)見ているときもあります。

 
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2a-4 コーヒーブレーク 1
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