ルミノール反応実験
~夏の夜、花火の余興に面白そうです。 科学への興味、好奇心、教育に。~
推理小説やサスペンスドラマでよく登場するルミノール反応。 反応自体は決して怪しいものではありません。
この反応を応用して、血痕などに含まれている「ルミノール反応に必要な触媒物質」を極めて鋭敏に検出できることから、科学捜査などに応用されているのです。
この触媒物質は血液である必要はなく、酸化を触媒することができる物質であればルミノールを光らせることが可能です。
これは例えば鉄や銅のイオンで、これらは単純な化学物質です。
例えば銅イオンとして、古い十円玉に弱い酸を微量滴下し長時間放置すると銅イオンが微量溶けだしてきます。 これは反応の触媒になり、発光させることができます。
また、生の食肉(肉汁)やレバーなども、当然のことながら反応を触媒します。
夏の夜に黄緑に光るホタル、これも類似の反応を体内で起こさせて発光しています。ホタルイカ、提灯アンコウ、光るクラゲ、光るキノコ、発光生物は他にも知られています。
ルミノール反応、この怪しく青白く光る発光現象はいったいどんな現象なのでしょう。
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まずは実験から。
発光度は弱いが長持ち 発光度は強いが短い
青白と黄色を演出していますが、赤紫も可能です。
ここでの黄色は、ルミノールの青白い発光を受けて、この光を別の(黄色の)波長の光に変換する蛍光作用を持った物質によって発光させています。 単純に黄色の色水を入れても、発光を吸収して暗くなるだけで、黄色くは光りません。
触媒や酸化剤、ルミノールの濃度を低くすると初期の明るさは若干下がりますが、長持ちします。
濃度を上げて初期の明るさを明るくすると、発光持続時間は短くなります。
このような演出方法も面白い。
別の演出 紙に触媒物質を塗って発光 赤紫の蛍光(先頭)
ルミノール分子が(酸化されて)発光しているので、逆に光を当てて見ると全く違った色になっています。
反応が進むと茶色く変色します。 ルミノールが酸化されて変色したものです。
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紙片に字を浮かび上がらせるルミノール反応
まさに科学捜査の雰囲気が出ています。
触媒を紙の方に塗って、字を浮かび上がらせることができますが、家庭用の録画機では感度が不足してフォーカスがうまく合わなかったり、感度が足りずうまく写らなかったりします。
実際に暗いところで目を慣らし、肉眼で見るとはっきりと見えます。
以上、まずは実験。 夏の夜、花火の余興にいかがでしょう。
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科学的解説
燃焼、水を含ませた生石灰、化学カイロ(鉄の酸化を利用)など、化学反応には発熱を伴うものが多いですが、反応時のエネルギーとして、熱を放出する代わりに光のエネルギーを放出する反応があります。
これがルミノール反応による発光の正体です。
ルミノールという物質は、非常に酸化されやすいヒドラジンという物質を出発点にして作られます。 このルミノールを弱アルカリ性の溶液に微量溶かしたものが、ルミノール液です。
これ自体は空気中に放置してもあまり酸化されませんが、過酸化水素、及びこの過酸化水素を分解して酸素を発生させ、この酸素による酸化反応を触媒する物質と共存すると、極めて早く酸化反応が進みます。
通常、検出したいのはこの触媒になっている物質の方なので、ルミノールを溶かした溶液と、薄い過酸化水素溶液(オキシドールとして市販されている)を別々に保存しておき、使用する直前に混合し、これを触媒となる物質の方に吹き付けたり滴下します。
この混合溶液を、鉄や銅のイオンなど、反応を触媒する物質のあるところに吹き付けたり、滴下したりすると、過酸化水素の分解とルミノールの酸化反応が急速に進み、ルミノールの発光が見られます。 触媒物質はごく微量でも反応が見られます。
ルミノールや酸化剤としての過酸化水素の濃度が高いと発光が強くなり、触媒物質の濃度が高いと同様に発光が強くなります。(ただし、触媒の濃度を高めて発光を強くした場合には、発光持続時間が短くなります。)
反応の触媒は、例えば鉄や銅のイオン、血液中のヘモグロビン鉄などがあり、これが科学捜査などで血痕を検出している原理です。 傷など血液があるところに過酸化水素水(オキシドール)を付けると、盛んに酸素の泡が出ることからわかるように、血液はこの過酸化水素の分解を極めて良く触媒します。
なお、こうした生物由来の触媒は、加熱すると触媒活性が失われますので、レバーなど生物由来のもので実験する際は、非加熱の状態で試してみてください。
また、加熱食品に昆虫などの異物混入などの問題が発生したとき、これが食品製造時に混入したのか、製造後に混入したのかを検査するような時にも使われています。
つまり、昆虫などでもルミノール反応が見られますが、これが食品製造時の加熱を経て混入されたものであれば、触媒が加熱されて活性を失っており、ルミノール反応は起こりません。
反応が見られるのであれば、これは加工等のため加熱された後、これが冷まされた後の工程で混入したもの(加熱工程を経ていない)ということになります。
過酸化水素を分解触媒する物質としては、小学校の実験などでも二酸化マンガンが最も良く使われますが、二酸化マンガンはルミノール反応の酸化触媒としては、鉄イオン、銅イオン、血液ほどの強い作用はありません。(光ることは光ります。)
また、鉄イオンは時間が経つと、水に不溶の水酸化鉄などが生じやすいです。 これは要するに「鉄サビ」ですから色合いが悪く、鉄イオンの使用はあまりお奨めしません。
従って、ここで試してみる触媒としては銅イオンが最適と考えられます。
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使い方、応用
前述のとおり、
・夏の夜、花火の余興に
・科学教育の教材に
・食品の異物(生物)混入時の検査に応用されています。(その道のプロに依頼してください。)
・大腸検査で潜血陽性になったが、精密検査はしなかった。ずっとなのか気になる。
(同じく、その道のプロ、病院や医師にご相談ください。)
・・・病院などの検査とは感度が違うので、病院の検査の代用にはなりません。
当てにはならない一つの判断材料にはなり得ます。 (ただし反応が出なかったからといって大丈夫とは言えません。 気になる場合は医師にご相談ください。
逆に、心当たりがないのに、毎回確実に反応が出るという場合には、少々大変だが精密検査してみよう、という動機づけにはなり得ます。)
・夏休みなどの自由研究に。 酸化剤の濃度、触媒の濃度と発光強度、持続時間の関係、これらの理屈付け。 また、蛍光とは?、この現象のしくみなど。
(なお、蛍光液については、明るいところでも、光を受けて、この光を別の波長に変換して光る様子が分かります。 蛍光ペンなどにも使われているのでお馴染みの現象です。
発光色の違う発光ダイオードの光でも蛍光は生じるか、などもテーマになりそうです。)
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(発光ダイオードの光を当てたときの蛍光に関する追記)
実験例は「実験をうまくやるポイント」のページ (取説に記載のパスワードページ)に記載していきます。(赤、黄、緑、青、白、紫外の6種類を掲載しています。) こちらのpublicページでは、青と紫外線LEDの光の2種類を、この「13E.蛍光液(黄)」溶液に当ててみた写真だけを掲載しておきます。 興味のある方は他の色も試してみてください。 青は蛍光が見られますが、紫外は反応なしです。
こうした結果に対する考察も、夏休みの自由研究にできるかもしれませんね。
青色LEDの光を当てた 紫外線LEDの光を当てた 通常の光のとき
(画像クリックして拡大すると様子が分かります。)
なお、紫外線LEDの光を当てたときの写真は、近くにYシャツの袖を置いて写しています。
Yシャツなど「白さを強調したい衣類」は、よく使われる方法として、これに蛍光色素を含ませておき、その白さを更に向上させるような処理がなされています。 この目的に、普通の可視光を変換する蛍光色素を使った場合、その波長部分を別の波長の光に変えてしまため、白(=各色の混合色)のバランスが崩れ、白く見えなくなってしまいます。
(例えば黄ばんだ色など好ましくない色になります。)
従って、「白さを増す」という目的のためには、人の目には感じられない領域(例えば紫外領域)の光を可視光の領域に変換する蛍光色素を使うのが良いということになります。
写真を見ますと、このYシャツは紫外光を当てられて光っていますが、黄色の蛍光色素や背景に置いた白い紙は蛍光していないことが分かるかと思います。
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お分けしています。
ホタルの飛び交う季節、花火もきれいで良いですが、ちょっと変わったルミノール反応実験を試してみてはいかがでしょう。
花火の余興として。 但し家族・身内でやる場合には全く問題ありませんが、友人達とやる場合には、ホタルやホタルイカ、提灯アンコウの背景説明などで、まず雰囲気作り・イントロをうまくやりましょう。 雰囲気作りに失敗すると「妙なものを持ってきたな~」と言われかねませんので。
うまくやると不思議さいっぱい、花火よりも盛り上がるかもしれません。
本実験コーナーでお取扱いしているのは、
・13A: ルミノールA液
・13B: ルミノールB液 (酸化剤です。 使用分量を取説に記載)
・13C: ルミノール活性液 (溶液を光らせるための触媒溶液で、問題ない程度に極めて薄くしています。)
・酸(これを使って、紙に塗って光らせるための溶液を作ります。 ごく薄い酸溶液です。)
上記の13C.ルミノール活性液 (触媒溶液)は、紙を光らせるには薄く、光り方が弱いのでこちらをご提供します。 この溶液の使い方は こちら(クリック) をご参照ください。
(ここでは、紙に触媒物質を塗って字などを光らせるのが目的ではなく、いろいろやってみてどんなものが光るか試してみたいことと思います。 従って、試してみる材料にいろいろ適用できる「薄い酸」をご提供しています。)
なお、プロの方向けには、文字などを書いてそこを光らせたい、という用途で、確実に書いた部分を明るく光らせる触媒溶液もご提供できます。 個別にご連絡ください。 こちらは取扱上の理由からプロの方に限定しています。
(プロの方とは: 演出や舞台で利用されるケース、マジシャン、撮影などで使う場合を想定しています。 量などもう少し多めに必要な場合、個別にご連絡いただければ対応いたします。)
13A.ルミノールA液は30ml入っています。
溶液を光らせるにはほんの少量ずつ使わないとすぐになくなってしまいますが、触媒側を光らせ、これを検出するような使い方としては、たくさん入っています。
(溶液側を光らせる場合でも、小さめのカップやグラスであれば0.5~1mlもあれば光る液体の演出/実験は十分できますから、30mlあれば60~30回程度の演出/実験ができます。)
発光を受けて、これを黄色の光に変換する蛍光材料もオプションで提供します。冒頭の実験で黄色く光っている溶液はこれを使っています。 「13E.蛍光液(黄)」を指定してください。
以上のお求め方法は、
「手品をお分けしています」のコーナー
http://morinoneiro.jp/index.html#shop1 をご参照ください。
手品、実験をもっと見る(レ: クリック)
他にもいろいろな色と変化が見られます。
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花火の余興に+α
なお、花火に色を付けている材料(炎色反応材料)は、こちら(レ)のコーナーでお分けしています。花火の代わりに燃料用アルコールを使い、炎色を引き出します。
風の当たらないところで、周囲にアルコールの容器など燃えるものが無い状態で行ってください。
上記の炎色反応実験のやり方はこちら(レ: クリック http://morinoneiro.jp/flame1_set.html#youki)
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ルミノール反応実験セット (1-70L)の実験セット内容:
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「1-70L ルミノール反応実験セットは下の図のセットとなっています。
・13A.ルミノールA液 30ml
・13B.ルミノールB液 6ml
・13C.ルミノール活性液 12ml
・薄い酸 12ml
・取扱説明書
・ホームページ解説コーナ(2節)の参照用パスワード
からなっています。
写真の13E.蛍光液(黄)は、ルミノールの青白い発光を黄色の波長の光に変換する蛍光作用を持った液の約6ml入りです。
・13E.蛍光液(黄) 6ml
オプションですので、追加で指定してください。
光る溶液を作る実験は13A、13B、13Cを混合しますが、「13A.ルミノールA液」は薄めないで使いますので、この量が作れる限度です。
紙などに塗って光らせる、あるいは発光を触媒する物質が存在していないか調べるような使い方の場合、塗ったり、滴下したり、スプレーしたりする量は少なくて済みますので、こちらの実験の使い方ではいろいろと調べてみるには十分な量が入っています。
実験のやり方の概要は ルミノール反応実験 のページをご参照ください。
↓クリックすると拡大表示します。
1-70L ルミノール反応実験セット
(オプションの13E.蛍光液(黄)を入れています。)
13E.蛍光液(黄) (オプション) 13D.活性液(II) プロ用
紙などに塗った部分を明るく光らせます。
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「ルミノール反応実験セットについて、きれいなパッケージ版を作りました。
プレゼント用などにも使えます。
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本サイトは、
・色の科学、
・色の手品、
・色にあふれた花、
・さまざまな色の貝、
といった 「色」や「科学」に関係したことがら、花に関係したことがらを主テーマとし、ここから関連して、
・香りに優れた花色々
・花の香りの科学
・色彩豊富な 「美しい南フランス」
・高分子の科学、科学であそぼう「ペットボトルロケット」
など、いろいろを紹介しています。 是非、本ページのホーム「森の音色 cafe ~不思議な色の世界~」をチェック
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sample (1.色水マジック、 2.科学で遊ぼう より)
1-1a 虹を作ろう 1-5a にじいろスティック 1-2a ジュースで乾杯 1-9 シェイクシェイク
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2d 花の香りの正体 1-3a 突然ワイン 2b.高分子の科学 2c ペットボトルロケット
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